2012年1月2日月曜日

―2011年最後のトラブル―



風邪も治りかけたところで、まさかの雨。
朝は降っていなかったのに一端降り始めたら夜まで止むことがなかった。
外国人が多い為、物価が少し高い義鳥から一日も早く抜け出したいというのと、次の街Jinhuaで受け入れてくれる人が見つかったということで離れることに決めた。

自転車も自分もレインコートを着てフル装備。
しかし道中はきつかった。冷たい雨は容赦なく体を冷やしていった。

なんとかJinhuaに着いたが雨と雲でGPSがうまく衛星をキャッチしてくれない。
おまけにメモしていたノートが雨でにじんで字が読めなくなってしまった。
地道に道端の人に聞いていくが、待ち合わせの大学の場所を誰も知らない。街について一時間もさ迷っている。そんな中、ある工場の警備員に道を聞いたときに、
「寒いから中に入って、お茶でも飲みなさい。」
って、嬉しかった。凍った体が解ける感じがわかった。
道もそのおじさんの優しい笑顔いっぱいのジェスチャーのおかげでわかった。
気持ちが折れそうになったとき、やっぱり助けてくれるのって、同じ「人」なんだね。
無事に着いたのはウクライナとモロッコからの留学生が共同で暮らすマンション。みんな歓迎してくれ、温かいシャワーにもありつけた。あれだけ寒かったのにやっぱり走った後のビールって最高。色んな意味でハッピーな4人。後2日はここで楽しく過ごせそうだ。

2011年も暮れ、12月31日。
さて僕はどこにいたかというと。
自転車コイでいます。
99km走ってQuzhouという街に着く予定。

ところで、みんなの旅のテーマ曲ってなんだろうか。
あの場所でこの音楽を聴きたいとか、電車の車窓から景色を眺めながらこの音楽を聴きたいとか、きっとみんなあるはず。音楽って旅にはかかせないものだと思う。
僕の旅のテーマ曲はいろいろあるんだけど、
出発の日にこれを聞いてスタートしたいって思っていた曲が「Alkaline trio」 の「Radio
走っていて旅しているんだなーって実感するのが「くるり」の「ハイウェイ」
同じ内容の曲ばかりで飽きないのか。それが、ここに来るまでに多くの人々から音楽をもらい、交換し、今では多国籍な音楽たちが好きなときに聞けるようになった。

いつものようにシャッフルにして音楽を聴いていたとき、いきなりAKB48が流れてきたもんだからびっくりした。
「会いたかった」
ちょうど去年の今頃、病院の忘年会でセーラー服を着た同僚達と踊った曲だ。忘年会前夜も仕事終わりの手術室の中でオドリを練習したことや、ドンキホーテに衣装を買いに行って、そこで同じく買出しに来ていた副師長とばったり会ったこと、いろいろと懐かしい思い出が蘇ってくる。

あれからもう一年経つんだ。

思えばこの旅も、もうあの頃から計画を進めていた。だから一年後の自分を想像しながら仕事で辛いことがあっても頑張れた。全てが自分の夢に繋がっているんだって。
今していることに無駄なことなんて何もないんだって。
トイレで流した涙も無駄じゃないんだって。

だから今の自分にとっても満足している。
仕事を辞めたから震災被災地にも行けた。和歌山の台風の後にもすぐに駆けつけることができた。
そして今、予てからの自分の夢のひとつをまさに実行中。
そんな風にいろいろと一年を振り返り、思い巡らせながら順調に走っていた。
そろそろお尻が痛くなってきたのでゆっくりブレーキをかけつつ自転車をもたれ掛ける場所を探していたそのとき。

道路の反対側に立っていた女性が突然倒れた。
一緒にいた子供は泣き喚いている。オーマイガ!

こんな時のためにいつもCPR(心肺蘇生)ができるマスクなど一式まとめて自転車にくっつけていた。僕は自転車を路肩に転がし、マスクを掴んで車をよけながら女性の元に向かった。呼吸が早く苦しそう、涙を流している。地元の人たちが出てきて一生懸命立たせようとしていたが、女性は力なくもちろん歩けない。それでも立たせようとする人たちを引き止め、救急車を呼ぶように叫んだ。呼吸もしているしこちらの呼びかけにも答えた。40代くらいの女性・・頭か、それとも他の部位か。てんかん発作か。病院研修でのケーススタディーのようだ・・。
「寒い・・。」
手が冷たく震えている。呼吸のしやすい安楽な体位にするも地面が冷たく、上体を起こして着ているジャケットと上着を彼女にかけた。すると周りの男性達もコートを脱いで覆ってくれた。上腕が伸びたまま硬直して震えている。名前を聞くが途中までしか出てこない。やはりてんかん発作か。僕の未熟な知識ではそれくらいしか考えられないが、車が到着するまでは悪化させん!と彼女を抱きかかえながら温め、意識を失わないようにずっと話しかけた。硬直が溶けたころに家族の知り合いの車が到着した。この中国の小さな村に救急車がすぐに到着する望みは薄い・・。すぐに車に乗せ、地元の人と共に病院へ。
見送ったその15分後くらいに救急車が到着した。病院へ向かったことを伝えると引き返していった。

その後の何十キロ走っただろうか。一度も休憩せずにひたすらペダルをこいでいた。
先ほどの女性のその後の安否が気になってしょうがない。自分のとった行動はどうだったのか。

そんなことを考えているうちに忘れていたことを思い出した。
おしっこしたかった。自転車を止め一休憩入れると、なんてこった。
パンクしてる・・。

神様、僕が畑でおしっこしたからですか。

日暮れまであと一時間。パンクを修理するには荷物を全ておろさなければならない。
水がないからパンク箇所も耳で探し当てなければならない。今年中に衢州市につくかな。
もう焦ってもしょうがない。2011年は笑顔で終わりたい。音楽を流しながらノリノリで直す。すばらしくスムーズにそして完璧に修復できた。通りすがりのおじさんもなぜか笑顔。

紅白歌合戦が始まり、日本のお茶の間では美味しいお寿司や温かい鍋が並び始めたころ、受け入れ先の友達が待つKFCに着いた。意外に大きな町だが本当の年末ではないため大した盛り上がりはみせない。むしろ自転車を停めた僕の周りがにぎやかになる。

「騎自転車、世界一周。加油日本!謝々中国!」

自転車につけたこのサインが目に留まるとフレンドリーになってくれる。
中国も日本の震災時に助けの手を貸してくれた。
だから「ありがとう中国。謝々中国!」

さようなら2011年。

はじめまして2012年。

みなさん新年もどうぞよろしくお願いします。 Kei




★中国・杭州で参加したLipdubのビデオUPします★

  - 杭州Lipdub - 僕をみつけて~!

Jinhua - Quzhou

走行距離 : 99.01km
平均速度 : 19.0km/h
最高速度 : 43.0km/h 

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