2012年8月10日金曜日

ーモテ期(おじ)ー



箱根峠なんて今思えば小さく見えてしまう程、四方を山脈に囲まれた都市、西安。古代から商人が行き来したシルクロードの出発点だ。

河南省からShaanxi省の省都、西安に抜けるには2つのルートがある。
1つ目は河南省最大都市、南陽市から北西に向かい西峡や商洛などの街を通り抜けて行くルート。一気に1000m以上標高が上がり大自然の中を通るハードな道のりだが最短ルート。国道があり、道路情況は良い。


2つ目は河南省を貫くように、南陽から平頂山、洛陽、三門峡などの街を通り抜けて行くルート。距離は1つ目の1.5倍。山々は越える事になるが比較的易しい。
選んだのはルート2。
理由は河南省満喫コースだからとでも言えばいいのか。河南省は中国最大の人口を誇る省であり、河南人は様々な場所に散らばっている。特に北西、新疆地方にいる漢族の多くが河南人だという。ではいずれそこに行くならばその前に彼らの故郷を通って見ておきたい。僕だって、誰だって古里の話をして悪い気をする人はいない、そのはずだ。


スイカが美味しい季節になった。
路上ではあちこちで果物を売る村人の姿を目にする。
日本の感覚でスイカを見ていたのできっと高いだろうなというイメージがあった。しかしその価格を知ったときに驚愕した・・。日本で一玉2000円くらいの大玉が、中国では100円程なのだ。無知だった。それを知るまでは少し遠慮がちで見ていたスイカも今では一日小玉一玉食べてしまう。


この日は特に喉が渇いていて、早く食べたい思いを押さえられず路肩の木陰に腰を下ろしナイフでザクザクスイカを切っていると、自分の指もスパッ。
それから洗濯で洋服を絞るときに激痛が走る日が続いた。


南陽を出発してから数日間、嬉しい事にモテ期が舞い降りてきた。
走っていれば横付けして一緒に並走したがるバイクのおじさん達。
黒光りする高級車からわざわざ降りて来てお茶をくれたおじさん達。
昼食をおごってくれたおじさん達。美容院のクーラーの下で涼ませてくれたおじさん達。サインと写真を条件に街を案内してくれたおじさん達・・。


そう、珍しく光来したモテ期にモテたのはおじさん達からだった。ちーん。
いいよ〜腹出てたって、地元の方言わからなくたって、楽しいからさ。



夕方、叶県に入った。沈むオレンジ色の夕日をバックに見えたのがイスラム教のモスク、建物の天辺には三日月の形のオブジェが逆光を受けて黒々と見える。すれ違う三輪バイクには長いあご髭を生やしたムスリムの男が運転席に、その後ろには全身を布で多い、目だけを出している女性が乗っていた。とても大きくて綺麗な目だったのを覚えている。
新疆はまだ遠いが確実に近づいている事を実感した。
新疆とは:中国の北西部、ウイグル人やカザフ族など含め数多くの少数民族が暮らし、より中央・中東アジア系に近い人々が暮らす地域)


そんなムスリムの人達を見てシルクロードへの想いを馳せらせながら走っていると、「日本肥料・・」的な看板を発見。思わず嬉しくなって停めて休憩していると、その隣が安宿だった。そこからもぞくぞく人が出て来て、話しているうちにこの街の人のフレンドリーさに惹かれこの安宿に泊まる事に。
シャワーを浴び、汚れを落とし街に繰り出す。宿を訪れた地元のおじさんが夕食に連れて行ってくれた。
何が食べたい?の質問にいつも答えるのが「ダーパイダン」。
「屋台」の意味で、疲れ切った夜はエアコンの効いた室内よりも生暖かい外で冷たいビールを飲んでダラ〜と本を読んだり地元の人々に絡まれたりしている方がなんか好き。
彼は「ひよこ」という名前の小さな電動自転車の後ろに僕を乗せ、屋台やラーメン屋をハシゴして回った。地元の人達も混じって楽しい夜は更けて行く。

おじさん、お仕事何しているの?もう酔っぱらって笑いが止まらないおじさんに聞いてみたら、実は政府の人だった。
いや政府で働いているというだけで、悪い人ではなく、僕のファンだと言った。あ、そかモテ期だ。かかって来た彼の携帯の着ウタ、どこかで聞いた事あるよな・・。

「アーイヤイヤ・・恋の重低音〜」

え、モーニング娘?




 南陽 to 叶県
走行距離:117km
平均速度:17.5km/h
最高速度:33km/h

facebook: (keiichiro kawahara,河原啓一郎) http://www.facebook.com/coucou.kei




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